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便秘の原因と対策|薬の選び方・受診の目安まで

消化器内科

「毎日すっきり出ない」そんな悩みありませんか?

「お腹が張って苦しい」「数日出ないのが当たり前になっている」――。
そんな便秘の悩みは、年齢・性別を問わず非常に多く、日本人の約20%が慢性的な便秘に悩んでいるとされています。

特に女性や高齢者、小児では便秘が日常生活の質(QOL)を大きく下げる原因になります。

この記事では、便秘のタイプ別原因、薬剤治療、生活習慣改善、そして医療機関を受診すべきケースまで、専門医の視点で詳しくわかりやすく解説します。


  1.  


1. 便秘とは?医学的な定義と診断基準

便秘は単に「出ない」ことではなく、「排便が困難である」「不快感がある」状態を指します。
以下のいずれかに該当する場合、慢性便秘症と診断されます。

  • ・排便回数が週3回未満

  • ・排便時に強くいきむ必要がある

  • ・便が硬くコロコロしている

  • ・排便後もすっきりしない(残便感)

  • ・肛門の閉塞感

  • ・指で押す・抜くなどの補助が必要

これらの症状が3か月以上続いている場合、治療が必要とされます。


2. 便秘の主な原因と分類

便秘にはさまざまな原因があります。大きく以下の4つに分類されます。

【1】機能性便秘(慢性便秘の大部分)

  • ・食物繊維・水分不足

  • ・運動不足

  • ・排便習慣の乱れ(トイレの我慢など)

  • ・ストレス・自律神経の乱れ

【2】器質性便秘

大腸がん、腸閉塞、大腸ポリープなど物理的な閉塞が原因。

【3】薬剤性便秘

  • ・抗うつ薬、抗コリン薬

  • ・オピオイド(モルヒネなど)

  • ・鉄剤、カルシウム製剤

  • ・利尿薬などの脱水作用

【4】全身疾患に伴う便秘(症候性便秘)

  • ・糖尿病

  • ・甲状腺機能低下症

  • ・パーキンソン病、脳血管障害など


3. 便秘のタイプ別:あなたの便秘はどのタイプ?

便秘は「何が原因で出にくいか」によって以下のようにタイプ分けされます。

タイプ 特徴 主な治療
弛緩性便秘 大腸の動きが弱い 腸を動かす薬・浸透圧性下剤
けいれん性便秘 ストレスや自律神経の影響で腸が過収縮 刺激性下剤は避ける、整腸剤
直腸性便秘 便意を我慢し続けて直腸が鈍感に 坐剤・行動療法
器質性・薬剤性便秘 がん・薬剤など 原因除去+適切な下剤使用

4. 代表的な便秘治療薬の種類と特徴

便秘治療には大きく以下の種類の薬剤があります。

◆ 浸透圧性下剤:便を柔らかくする

▸ 酸化マグネシウム(マグラックス® など)

腸管内に水分を引き込むことで便を柔らかくし、自然な排便を促します。
副作用が少なく、慢性便秘の第一選択薬
⚠️ 腎機能が低下している方では高マグネシウム血症に注意。

▸ PEG製剤(モビコール®)

ポリエチレングリコールを主成分とする浸透圧性下剤で、便に水分を保たせて自然な硬さを保ちます。

  • 味付きで飲みやすく、小児・高齢者にも適応

  • クセになりにくく、長期使用可能

  • 脱水リスクが低く、安全性が高い

市販薬にはない医療用処方薬です。


◆ 上皮機能変容薬:腸の水分分泌を促進

▸ ルビプロストン(アミティーザ®)

腸の上皮細胞に作用し、腸管分泌を促進して便を柔らかくします。
慢性便秘・便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)に有効

▸ リナクロチド(リンゼス®)

腸内分泌と鎮痛作用を併せ持ち、腹部膨満や腹痛がある便秘にも効果的。


◆ 刺激性下剤:腸を直接動かす(※常用注意)

▸ センノシド(プルゼニド®など)

大腸の神経を刺激して腸を動かす。即効性はあるが、耐性や依存のリスクあり。
使うとしても頓用(たまに)に限定


5. 便秘を改善するための生活習慣

薬だけでなく、日常生活の見直しが便秘改善には重要です。

  • 朝食後にトイレに行く習慣をつける(胃結腸反射)

  • 水分は1日1.5〜2Lを目安に(コーヒーやアルコールを除く)

  • 食物繊維を1日20g以上(野菜、果物、玄米、海藻)

  • 毎日軽い運動(ウォーキングやストレッチ)

  • ストレスマネジメント(自律神経を整える)


6. 受診が必要な便秘とは?

以下のような症状がある場合は、自己判断せず早めに内科・消化器科を受診してください。

  • ・急に便秘になった

  • ・血便や便が細くなっている

  • ・貧血や体重減少がある

  • ・市販薬が効かなくなった

  • ・3日以上出ないことが続いている

大腸がんなどの重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。


7. よくある質問Q&A

Q. 便秘薬を毎日飲んでも大丈夫?
▶ モビコールや酸化マグネシウムは習慣性が少なく、長期使用が可能です。刺激性下剤は頓用が望ましいです。

Q. 市販薬と処方薬の違いは?
▶ 医師の処方薬のほうが効果や安全性、長期管理に優れているケースが多いです。

Q. 便秘が悪化するとどうなる?
▶ 腹部膨満、食欲低下、痔、直腸脱、腸閉塞のリスクもあります。QOLの低下だけでなく、命に関わるケースも。


8. まとめ|たかが便秘、されど便秘 医師に相談を

便秘は「出ないだけ」の症状ではなく、生活の質を大きく左右する慢性疾患のひとつです。
市販薬に頼りすぎず、正しい知識で対策を行い、必要に応じて医師に相談しましょう。


【当院ではこんな便秘治療を行っています】

  • ・生活習慣のアドバイス

  • ・便秘タイプに合わせた薬の処方(酸化マグネシウム、モビコール、ルビプロストンなど)

  • ・食事・運動指導、再発予防の支援

便秘でお悩みの方は、お気軽に「たに内科・循環器・消化器クリニック」までご相談ください。