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家族性高コレステロール血症(FH)とは?

早期発見がカギです

「健康診断でコレステロールが高いと言われた」「家族にも同じような人がいる」――そのような方は、**家族性高コレステロール血症(FH)**の可能性があるかもしれません。FHは、遺伝が関係する脂質異常症の一種で、放っておくと若い年齢で心筋梗塞などの重い心臓病を引き起こすリスクが高まります。

症状は? 見逃されがちなサイン

FHの多くは無症状のまま進行します。しかし、以下のような特徴が見られることもあります。

  • 若い年齢からLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い

  • アキレス腱の肥厚(こぶのように硬くなる)

  • まぶたや手足に黄色い塊(黄色腫)ができる

  • 40代や50代で心筋梗塞になった家族がいる

これらの兆候がある場合、FHを疑い、早めの検査が重要です。

原因は? 遺伝によって起こる病気

FHは、遺伝子の変異によってLDLコレステロールをうまく分解できなくなる病気です。通常、肝臓がLDLを処理しますが、FHではその働きが十分に機能しません。その結果、血液中のLDLがどんどん蓄積し、動脈硬化が進行します。

FHは家族内で遺伝する疾患で、親がFHであれば**子どもに50%**の確率で遺伝します。そのため、家族全体での検査と管理が大切です。

治療は? 生活習慣+薬の併用が基本

FHの治療は、早期発見・早期治療が非常に重要です。治療の基本は次の通りです。

  1. ・生活習慣の見直し
     食事では飽和脂肪酸(バター、揚げ物など)を控え、野菜・魚中心の和食が推奨されます。また、適度な運動や禁煙も大切です。

  2. ・薬による治療
     多くの場合、スタチン系薬剤などでLDLコレステロールを下げる治療が必要になります。LDLが非常に高い場合には、エゼチミブやPCSK9阻害薬といった薬を併用することもあります。

  3. ・家族のスクリーニング(FHスクリーニング)
     本人だけでなく、ご家族も検査を受けることで、重症化を防ぐことができます。

日本では診断率が極めて低い現状

家族性高コレステロール血症(FH)は、決して珍しい病気ではありません日本では推定30万人以上のFH患者さんがいると考えられていますが、実際に診断されているのはそのごく一部です。

日本ではFHの診断率は1%未満といわれ、約99%の患者さんが診断されずに放置されている可能性があるのです。診断がつかないまま年齢を重ねることで、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクが高まり、知らないうちに命に関わる病気につながる恐れもあります。

なぜ診断されないのか?

  • ・症状が出にくく、健康診断でも見逃されがち

  • ・医療機関側でFHを疑って検査しないと診断がつかない

  • ・患者さん自身も「家族に似ているだけ」と見過ごしてしまう

このような理由から、FHは「沈黙の疾患」とも呼ばれています。FHを見逃さないためには、医療側の意識とともに、患者さんご自身の関心や情報へのアクセスも大切です。

ご家族と一緒に確認を

当院では、LDLコレステロール値が高い方に対し、FHの可能性を常に念頭に置いて診察を行っています。特に「家族も高コレステロール」「若くして心筋梗塞になった親族がいる」といった方は、FHを疑って検査を受けることが重要です。

FHは、早く見つけて、しっかり治療を始めればコントロールできる病気です。気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。