二次性高血圧とは?原因・検査・治療をわかりやすく解説
はじめに
高血圧は日本人にとても多い病気で、成人の3人に1人が高血圧といわれています。その大部分は「本態性高血圧(一次性高血圧)」で、生活習慣や遺伝が関係しています。しかし、全体の5〜10%程度は「二次性高血圧」と呼ばれるタイプで、明らかな原因疾患が存在する高血圧です。
二次性高血圧は、原因となる病気を治療することで改善する可能性があるため、早期に気づくことがとても重要です。本記事では、二次性高血圧の原因、症状、検査、そして治療についてわかりやすく解説します。
二次性高血圧とは?
二次性高血圧とは、腎臓やホルモンの病気、睡眠時無呼吸症候群、薬の副作用など、特定の原因がある高血圧のことをいいます。
一般的な高血圧と違い、原因を治療することで血圧が改善・正常化することもあるため、正しく診断することがとても大切です。
二次性高血圧を疑うサイン
次のような場合は、二次性高血圧を疑って検査をすることがあります。
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・30歳未満で高血圧が出てきた
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・急に血圧が高くなった
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・薬を飲んでもなかなか下がらない
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・血圧が非常に高い(180/110mmHg以上など)
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・頭痛、動悸、発汗などの症状を伴う
二次性高血圧の主な原因と特徴
① 腎臓の病気による高血圧(腎実質性高血圧)
腎炎や糖尿病性腎症など、腎臓の機能が落ちると、体の中の塩分・水分調整ができなくなり血圧が上がります。
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特徴:尿に蛋白や血が混じる、腎機能低下
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検査:尿検査、血液検査(クレアチニン)、腎エコー
② 腎動脈の狭窄による高血圧(腎血管性高血圧)
腎臓に血液を送る「腎動脈」が細くなることで、腎臓が「もっと血圧を上げろ」という信号を出し続けてしまう病気です。
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特徴:急な高血圧、薬が効きにくい、腎臓の左右差
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検査:腎動脈エコー、CT・MRIアンギオ
③ ホルモンの異常による高血圧(内分泌性高血圧)
副腎などからホルモンが過剰に出ることで高血圧を引き起こします。
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原発性アルドステロン症:塩分をため込むホルモンが多すぎる → 低カリウム血症、筋力低下、頻尿
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褐色細胞腫:アドレナリンが大量に分泌 → 動悸・頭痛・発汗・発作的な血圧上昇
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クッシング症候群:副腎皮質ホルモンが過剰 → 顔が丸くなる、中心性肥満、皮膚が薄くなる
④ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に呼吸が止まることで低酸素状態となり、交感神経が刺激され血圧が上がります。
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特徴:いびき、日中の眠気、夜間の頻尿
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検査:睡眠ポリグラフ検査
⑤ 薬やサプリによる高血圧(薬剤性高血圧)
ピル、ステロイド、鎮痛薬(NSAIDs)、甘草を含む漢方薬などが原因で血圧が上がることがあります。
二次性高血圧の検査
当院では以下の検査を組み合わせて原因を探します。場合によっては基幹病院へのご紹介もいたします。
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血液検査:腎機能(クレアチニン)、電解質(カリウム)、ホルモン値(アルドステロン、レニン、コルチゾールなど)
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尿検査:尿蛋白、カテコラミン代謝産物
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画像検査:腎エコー、CT、MRI、副腎評価
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睡眠検査:睡眠時無呼吸の有無を確認
二次性高血圧の治療 ― 原因ごとに違うアプローチ
二次性高血圧は、原因の病気を治療することが基本です。
腎臓の病気(腎実質性)
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腎臓の炎症や障害を治療しつつ、降圧薬(ACE阻害薬やARB)を使用します。
腎動脈の狭窄(腎血管性)
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狭くなった血管を広げるカテーテル治療(ステント)や、薬での血圧コントロールを行います。
ホルモン異常(内分泌性)
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原発性アルドステロン症:腫瘍があれば手術で切除、薬物で血圧を下げる
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褐色細胞腫:腫瘍の手術が基本(手術前に血圧を安定させる薬を使う)
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クッシング症候群:腫瘍摘出や薬物療法
睡眠時無呼吸症候群
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マウスピースやCPAP療法(寝ている間に空気を送る機械)、減量、生活改善
薬剤性
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原因となっている薬の中止・変更。必ず医師に相談して調整します。
二次性高血圧を放置すると?
放置すると、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全といった重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。特に若年者や重症高血圧では早期発見・治療が不可欠です。
当院でできること ― 二次性高血圧が心配な方へ
高血圧と一口にいっても、原因によって治療方法は大きく異なります。特に二次性高血圧の場合、早期に原因を見つけることがその後の健康寿命を大きく左右します。
当院では、以下のような検査・診療を一貫して行うことが可能です。
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・血液・尿検査:腎機能やホルモン異常の有無を詳しく調べます
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・心エコー・頸動脈エコー・腎エコー:動脈硬化や腎臓の状態を評価します
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・ホルター心電図:動悸や発作的な血圧上昇の背景を調べます
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・睡眠時無呼吸簡易検査:ご自宅で行える検査機器を貸し出し、SASの有無をチェックします
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・生活習慣病管理:高血圧だけでなく糖尿病・脂質異常症・肥満症とのトータルケアを行います
また、必要に応じて基幹病院と連携し、CT・MRI検査や外科的治療がスムーズに受けられる体制を整えています。
患者さまへメッセージ
「薬を飲んでも血圧が下がらない」「若いのに高血圧を指摘された」「急に血圧が上がることがある」――こうした方は、二次性高血圧の可能性があります。
当院では、循環器内科専門医が中心となり、原因の診断から治療、生活習慣の改善までサポートします。
“ただ血圧を下げる”だけではなく、“なぜ血圧が高いのか”を一緒に考え、安心して通っていただける医療を提供いたします。
お気軽にご相談ください。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
参考文献
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日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版.
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日本内分泌学会. 副腎疾患診療ガイドライン2018.
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日本腎臓学会. CKD診療ガイドライン2023.
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American Heart Association. Secondary Hypertension: Diagnosis and Management. Hypertension. 2018;71:14-22.
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Williams B, et al. 2023 ESC/ESH Guidelines for the management of arterial hypertension. Eur Heart J. 2023;44:3528–3639.