健康診断でLDLが高いと言われたら 放置してはいけない理由と正しい対処法
健康診断の結果で、「LDLコレステロールが高い」と指摘されて不安になったことはありませんか?
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・自覚症状がない
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・食事に少し気をつければ大丈夫そう
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・すぐに薬が必要なのか分からない
このように、対応に迷って放置されてしまう方が非常に多い異常項目でもあります。
しかし、LDL高値は動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の最大の危険因子のひとつです。
この記事では、
✅ LDLとは何か
✅ どの値から危険なのか
✅ まず何をすべきか
✅ 生活改善と薬物治療の考え方
を、循環器内科専門医の視点から分かりやすく解説します。
1. LDLコレステロールとは?なぜ「悪玉」と呼ばれるのか
コレステロールには主に次の2種類があります。
| 種類 | 役割 |
|---|---|
| LDLコレステロール | 血管の壁にコレステロールを運ぶ(悪玉) |
| HDLコレステロール | 余分なコレステロールを回収する(善玉) |
■ LDLが増えると何が起きる?
LDLが多い状態が続くと、
→ 血管の内壁にコレステロールが沈着
→ 動脈硬化の進行
→ 血管が狭く・硬くなる
→ 心筋梗塞・脳梗塞・狭心症の原因
となります。
LDLが高い=今すぐ症状が出るわけではないが、将来の重大な病気の“地盤”が作られている状態と理解するのが重要です。
2. どの数値から「高い」と言われるのか?
日本動脈硬化学会の基準では、LDLコレステロールの管理目標は以下のように分かれています。
| 分類 | LDLの目安 |
|---|---|
| 正常 | 120 mg/dL未満 |
| 境界高値 | 120〜139mg/dL |
| 高値 | 140以上mg/dL |
さらに、糖尿病、高血圧、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方では、より厳しい管理(100mg/dL未満、場合により70mg/dL未満)が推奨されます。
3. LDLが高いと、なぜ心筋梗塞や脳梗塞が増えるのか?
LDLが血管内にたまると、プラーク(動脈硬化のかたまり)を形成します。
このプラークが破綻し、その場所に血栓ができると、血管が急につまることで以下の病気が起こります。
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冠動脈がつまる → 心筋梗塞
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脳動脈がつまる → 脳梗塞
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下肢動脈がつまる → 閉塞性動脈硬化症
LDLが高い状態を10年、20年と放置するほど、発症リスクは雪だるま式に上昇します。
4. 健診でLDLが高いと言われたら「何をすべきか?」
① まずは再検査・精密評価を行いましょう
健診はあくまで「スクリーニング検査」です。
一度の測定だけで治療の要否を決めることはできません。
医療機関では以下を確認します。
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・中性脂肪(TG)、HDL、HbA1c(糖尿病)
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・血圧
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・腎機能
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LDLの高さ+他の危険因子の組み合わせで、治療レベルが大きく変わります。
② まずは生活習慣の見直しが基本になります
軽度〜中等度のLDL高値の場合、まずは生活改善が第一選択となります。
■ 食事のポイント
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・揚げ物・脂身・加工肉を控える
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・バター・ラード・生クリームを減らす
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・青魚(サバ・イワシ)を週2回以上
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・大豆製品・野菜・海藻・きのこを増やす
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・外食・コンビニ中心の食生活を見直す
■ 運動
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・1日30分のウォーキング
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・週150分以上の有酸素運動
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以上でLDLは5~15%程度低下すると言われています。
③ それでも下がらない場合は薬物治療を検討します
生活改善を3か月ほど行っても、
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・LDLが依然として140以上
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・他のリスク因子を多く持っている
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・動脈硬化の既往がある
場合は、薬による治療が勧められます。
5. LDLの薬は一生飲み続けるの?
最もよく使われるのがスタチン系薬です。
「一生飲まないといけませんか?」とよく聞かれますが、答えは——
“その人のリスク次第”です
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動脈硬化がすでに進んでいる方
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心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方
→ 原則として長期治療が必要 -
軽症で生活改善がしっかりできた方
→ 減量・運動が軌道に乗れば減量・中止できるケースもあります
6. 実は怖い「家族性高コレステロール血症(FH)」
以下に当てはまる方は特に注意が必要です。
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・若いころからLDLが180以上
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・両親・兄弟に心筋梗塞の人がいる
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・アキレス腱が太い
このような場合は、家族性高コレステロール血症(FH)の可能性があります。
FHは通常のLDL高値よりも心筋梗塞リスクが数十倍高いとされ、早期治療が極めて重要です。
7. 自覚症状がないからこそ「LDL高値」は怖い
LDLが高くても、痛みなどの自覚症状がありません。
しかし、最初の症状が“心筋梗塞で倒れる”という方は決して珍しくありません。
だからこそ、健診で見つかった今が、最も安全に対処できるタイミングなのです。
まとめ|LDLが高いと言われたら“放置しないこと”が最も大切です
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・LDL-Cは動脈硬化の最大の原因のひとつ
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・LDL-C140mg/dL以上は原則として要対応
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・まずは再検査+生活改善
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・下がらなければ、薬物治療で安全にコントロール可能
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・放置すると心筋梗塞・脳梗塞につながる
「今は元気だから大丈夫」ではなく、「今だからこそ将来を防げる」それがLDL管理の本質です。
さいごに
健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われて、どうしたらよいか迷っている方は、お早めにご相談ください。
当院では、循環器専門医がLDL-Cだけでなく、高血圧・糖尿病・動脈硬化・心臓病との関係まで総合的に評価し、お一人おひとりに最適な治療方針をご提案しています。
生活習慣のアドバイスから、必要に応じたお薬の調整まで、無理のない形で継続できる治療を大切にしています。
「まだ薬は飲みたくない」「本当に治療が必要か知りたい」そんな方も、まずは相談だけでも構いません。
将来の心筋梗塞・脳梗塞を防ぐ第一歩として、お気軽に受診ください。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
引用文献
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1.日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
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2.日本循環器学会:冠動脈疾患二次予防ガイドライン
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3.Stone NJ, et al. 2018 AHA/ACC Cholesterol Guideline. Circulation.
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4.国立循環器病研究センター:脂質異常症と心血管イベント
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5.日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019






