冬に心筋梗塞が増える理由|寒い季節こそ気をつけたい血管と心臓のリスク
冬になると、心筋梗塞や狭心症などの心臓血管イベントが1年の中で最も多く発生することが各国の研究で明らかになっています。特に12月〜2月に発症率がピークを迎え、救急搬送・突然死の割合も増加します。
なぜ冬にこれほど心筋梗塞が増えるのでしょうか?
この記事では、そのメカニズムと注意すべきサイン、予防法について、循環器専門医の視点からわかりやすく解説します。
1. 冬に心筋梗塞が増える最大の原因:血圧の急上昇(寒暖差)
冬に最も多いのが、いわゆる寒暖差による血圧の急上昇(モーニングサージ)です。
■ 寒い場所に出ると血管はどうなる?
気温が下がると、身体は体温を保つために
→ 血管をギュッと収縮させる(血管が細くなる)
ことで熱が逃げないようにします。
すると…
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・血圧が急に上がる
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・心臓に負担がかかる
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・動脈硬化部位にストレスがかかる
このような状態が起きます。
■ 特に危険なタイミングは?
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・朝、布団から急に起きて寒い室内に出る瞬間
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・トイレでいきむ
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・入浴時の脱衣所(寒)→浴槽(暖)の温度差
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・車庫・玄関など外気に触れる場所
急激な血圧変動により、
血管のプラーク(動脈硬化の塊)が破綻しやすくなるため、心筋梗塞が起きやすくなります。
2. 冬は自律神経が乱れて交感神経が優位に(心臓の負担増大)
寒さは自律神経のバランスを乱し、
交感神経優位(身体が緊張・興奮状態)になります。
その結果、
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・心拍数が上がる
-
・血圧が上がる
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・血管が収縮する
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・血栓ができやすくなる
という変化が生じます。
■ 強いストレスが心臓に与える影響
冬は仕事・学校・行事が重なりストレスも増えます。
ストレスはアドレナリン分泌を高め、血圧や脈拍をさらに上昇。
交感神経の過剰亢進は、
冠攣縮性狭心症(血管が急にけいれんして細くなる)
の発作を誘発しやすく、冬は特に増える傾向があります。
3. インフルエンザ・感染症の増加も心筋梗塞の引き金に
冬はインフルエンザや肺炎、ウイルス感染が増える季節です。
感染により、
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・全身の炎症が強くなる
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・血管内皮が障害される
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・血栓(血の塊)ができやすくなる
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という変化が起き、心筋梗塞リスクが数倍に上昇します。
■ インフルエンザ罹患後1週間は特に危険
研究によると、
インフルエンザ感染後7日間は心筋梗塞の発症リスクが約6倍になると報告されています。
冬は「感染」+「寒さ」
という2つのストレスが同時に加わり、心臓への負担が非常に大きくなります。
4. 冬は血液が“ドロドロ”になりやすい?
気温が下がると、水分摂取が減り「隠れ脱水」になりがちです。
すると、
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・血液が濃縮 → 粘度上昇
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・血流が悪化
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・血小板が固まりやすくなる
これらの変化が重なると、
血栓(血の塊)ができやすい状態になり、
詰まりやすい冠動脈では心筋梗塞を引き起こします。
特に高齢者はのどの渇きを感じにくく、リスクが高まります。
5. 冬に注意すべき危険なサイン
冬は軽い症状でも心筋梗塞の前触れである場合があります。
【要注意サイン】
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・胸の痛み・しめつけ
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・肩・背中・あごの痛み
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・動悸・息苦しさ
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・冷や汗
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・だるさ・気力低下
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・階段や坂道で息切れが増えた
特に冬は「風邪だと思って放置していたら心筋梗塞だった」というケースも少なくありません。
6. 心筋梗塞の冬のピーク:データで見る危険性
日本循環器学会の報告では、
心筋梗塞は12~2月に最も多く、夏の約1.5倍に上昇します。
また、以下の背景が重なるとさらにリスクが上がります。
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・高血圧
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・脂質異常症
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・喫煙
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・糖尿病
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・家族歴
特に高血圧×寒暖差はよくない組み合わせで、心筋梗塞の多くは血圧の急変に伴って起こります。
7. 冬に心筋梗塞を防ぐために今日からできる対策
① 室温の管理(最重要)
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寝室・脱衣所は18℃以上に
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トイレ・廊下にも暖房器具を
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入浴前に浴室を暖める(浴室暖房・シャワーを数分出す)
寒暖差の解消は心筋梗塞予防の最も効果的な手段です。
② 急な動作を避ける
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朝は布団からゆっくり起きる
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起床後すぐの激しい活動は避ける
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外出前は数分の準備運動・深呼吸
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③ 水分補給を意識する
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寒くても水分は必要
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就寝前に少量の水
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起床時にコップ1杯の水
血液の粘度が低下し、血栓予防につながります。
④ 血圧を定期的に測る
特に冬は以下のタイミングでの測定が効果的:
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・起床後1時間以内
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・入浴前後
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・寒い外出の前後
⑤ 生活習慣病のコントロール
- ・血圧
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・LDLコレステロール、中性脂肪
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・糖尿病など
の管理が重要になります。
健診後の数値が気になる場合は早めの受診がおすすめです。
⑥ インフルエンザ・肺炎球菌ワクチン
感染症による炎症・血栓リスクを下げるため、ワクチン接種は冬の心筋梗塞予防に非常に有効です。
⑦ 睡眠時無呼吸(いびき)対策
冬は無呼吸が悪化する季節です。
高血圧・不整脈を伴う方は特に検査をおすすめします。
8. 冬に多い“隠れ心筋梗塞”にも注意
冬は、軽い症状で救急搬送されてみると
実は心筋梗塞だった
というケースが増えます。
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症状としては、
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・強い疲労感
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・息切れ
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・軽いみぞおち痛
など、“風邪や胃腸炎と間違えやすい”症状で発症することがあります。
まとめ——冬は心筋梗塞のハイシーズン。早めの対策が命を守ります
冬は一年の中で最も心筋梗塞が増える時期であり、少しの体調変化が大きな病気のサインとなることがあります。
「胸の違和感が続く」「最近息切れが増えた気がする」「血圧が不安定」など、気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。当院では
- ・心電図
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・血液検査
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・心臓超音波検査
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・24時間ホルター心電図
など、必要な検査をその日のうちに行うことも可能です。
また、生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)や睡眠時無呼吸症候群など、心臓病の発症と深く関わる疾患の総合的な管理にも対応しています。
「大きな病院へ行くほどではないけれど、念のため相談したい」そんなときにも、どうぞお気軽に当院へお越しください。地域の皆さまの健康を守る“かかりつけ循環器内科”として、丁寧に診療させていただきます。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
参考文献
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1.日本循環器学会:急性心筋梗塞治療ガイドライン
-
2.Thygesen K, et al. Fourth Universal Definition of Myocardial Infarction. Circulation.
-
3.Kwong JC, et al. "Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection". N Engl J Med.
-
4.Japanese Society of Hypertension Guidelines 2019.
-
5.国立循環器病研究センター「冬季の心血管イベントに関する統計」






