睡眠時無呼吸症候群と高血圧・心臓病の深い関係
「いびき」は単なる癖ではありません
「いびきがひどい」「寝ているときに呼吸が止まっていると家族に言われる」「日中の眠気が強い」
これらはすべて、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)の代表的なサインです。
SASは単なる“睡眠の問題”ではなく、高血圧、脳卒中、不整脈、心不全など、命に関わる心臓・血管の病気と深く関係していることが明らかになっています。この記事では、いびき・無呼吸と高血圧・心臓病の関係について、循環器専門医の視点から詳しく解説します。
1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に何度も呼吸が止まる、または浅くなる病気です。
■ 診断基準
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10秒以上の呼吸停止が
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1時間あたり5回以上(AHI≧5)が診断の目安となります。
■ 主な症状
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・大きないびき
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・睡眠中の無呼吸
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・夜中に何度も目が覚める
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・朝起きたときの頭痛
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・日中の強い眠気
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・集中力の低下
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・倦怠感
日本国内には約500万人以上の潜在患者がいると推定されており、多くの方が未治療のまま生活しています。
2. SASが高血圧を引き起こすメカニズム
SASと高血圧は非常に密接な関係にあります。
■ 無呼吸が起こると体の中で何が起きるのか?
無呼吸が起こるたびに、
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・酸素不足(低酸素)
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・交感神経の強い刺激
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・血管の収縮
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・心拍数の上昇
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が起こります。
これが一晩のうちに何十回〜何百回も繰り返されるため、
夜間も血圧が下がらず、24時間ずっと高血圧の状態が続くようになります。
■ 治療しても下がらない“治療抵抗性高血圧”
SASの方は、降圧薬を2〜3種類飲んでも血圧が下がらない
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「治療抵抗性高血圧」
になりやすいことが分かっています。
実際に、治療抵抗性高血圧の約50%にSASが合併しているという報告もあります。
3. SASが引き起こす心臓病
■ ① 心筋梗塞・狭心症
無呼吸により酸素が不足すると、心臓は常に「酸欠状態」になります。
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・冠動脈の動脈硬化が進行
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・血圧上昇による血管ダメージ
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・血栓形成の促進
が重なり、心筋梗塞や狭心症のリスクが2~4倍に上昇すると報告されています。
■ ② 不整脈(心房細動など)
SASの患者さんでは、
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心房細動などの不整脈が非常に高頻度にみられます。
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心房細動 は心臓内に血栓ができやすく、血栓が脳に飛ぶと脳梗塞となります。
■ ③ 心不全
長期間にわたって
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・高血圧
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・低酸素状態
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・心拍数の増加
が続くと、心臓は次第に疲弊し、心不全へと進行していきます。
実際に心不全患者の約半数にSASが合併しているといわれています。
4. SASと脳卒中(脳梗塞・脳出血)との関係
SASは心臓病だけでなく、脳卒中の大きな危険因子でもあります。
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・高血圧の悪化
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・動脈硬化の進行
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・心房細動の合併
これらを通して、
脳梗塞・脳出血の発症リスクは約2〜3倍に上昇します。
5. こんな方はSASの検査をおすすめします
以下に当てはまる方は、特に注意が必要です。
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・家族に「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」と言われる
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・朝起きたときに頭痛がする
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・日中の眠気が強い
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・高血圧がなかなか下がらない
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・心房細動や不整脈がある
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・心筋梗塞・脳梗塞の既往がある
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・肥満(BMI25以上)
6. SASは検査で簡単に見つかります
SASの検査には、
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簡易検査(自宅)
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精密検査(入院・PSG検査)
があります。
現在は多くの方が、ご自宅で行える簡易検査からスムーズに診断が可能です。
7. SASの治療で血圧・心臓病リスクは下がります
■ CPAP療法の効果
中等症〜重症のSASでは、
CPAPが第一選択となります。
CPAP治療を行うことで、
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・夜間高血圧の改善
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・日中の眠気の改善
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・心房細動の再発抑制
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・心筋梗塞・脳卒中の発症リスク低下
など、多くの心血管イベント抑制効果が報告されています。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、
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・高血圧
- ・心房細動
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・心不全
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・脳卒中
など、数多くの重い病気と深く関係しています。
「いびきくらい大丈夫」と放置せず、早めの検査・治療が命を守ります。
「いびきがひどい」「最近血圧が高くなってきた」「動悸や息切れが気になる」など、少しでも思い当たる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。当院では、循環器専門医が在籍し、高血圧・不整脈・心不全などの心臓疾患と、睡眠時無呼吸症候群との関連を専門的に評価することが可能です。ご自宅で行えるSAS簡易検査のご案内から、治療のご相談まで一貫して対応しています。
「まだ病院に行くほどではないかも」と迷われている方も、早めのご相談が将来の心臓病・脳卒中の予防につながります。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
引用文献
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1.日本循環器学会:睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患に関するステートメント
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2.日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019
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3.Marin JM, et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnea-hypopnea. Lancet.
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4.Somers VK, et al. Sleep apnea and cardiovascular disease. J Am Coll Cardiol.
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5.国立循環器病研究センター:睡眠時無呼吸症候群と心血管疾患






