血圧が高いときに出る症状とは?無症状でも要注意!
「血圧が高いと言われたけど、体調は悪くないから大丈夫」
「健康診断でひっかかったけど、症状もないし気にしていない」
――そんな声をよく耳にします。しかし、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状のないまま、心臓・脳・腎臓といった重要臓器に障害を与え、命にかかわる合併症を引き起こす病気です。今回は循環器内科専門医の視点から、高血圧で現れることのある症状となぜ無症状でも危険なのか、どのように予防・治療すべきかを、わかりやすく解説します。
高血圧とは?~基準と種類~
● 診断基準(日本高血圧学会ガイドライン2024)
測定場所 | 収縮期血圧(上) | 拡張期血圧(下) |
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診察室血圧 | 140 mmHg以上 | 90 mmHg以上 |
家庭血圧 | 135 mmHg以上 | 85 mmHg以上 |
1回の測定だけではなく、複数日の家庭血圧の平均値が重要です。
● 高血圧の分類
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本態性高血圧:遺伝・食塩過剰・肥満・ストレスなどが原因
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二次性高血圧:腎疾患・内分泌疾患(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など)・睡眠時無呼吸症候群などが原因
血圧が高いときに現れる可能性のある症状とは?
ほとんどの高血圧は無症状ですが、血圧が急激に上昇したときや、高値(180/110mmHg以上)になると、以下のような症状が現れることがあります。
1. 後頭部を中心とした頭痛
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特に早朝に多い
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鈍い圧迫感・拍動性
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高血圧性脳症や脳出血の前兆の可能性もあるため要注意
2. めまい・ふらつき
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血圧の急上昇または変動による脳血流の不安定化
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起立時にふらつく場合は自律神経失調や起立性低血圧も鑑別に必要
3. 胸の圧迫感・動悸
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血圧が高いと心臓の酸素需要が増え、狭心症のような症状や不整脈が出ることがあります
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「圧迫感・締めつけ感」がある場合は心筋梗塞の初期症状も疑うべきです
4. 息切れ・全身のだるさ
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高血圧が進行すると心臓のポンプ機能が低下し、高血圧性心不全に至る可能性があります
5. 目の異常(視野のかすみ・チラつき)
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網膜出血や視神経の浮腫による
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長期の高血圧で高血圧性網膜症を引き起こすことがあります
6. 肩こり・耳鳴り・不安感
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自律神経の不調、血管の緊張、精神的ストレスにより現れることがあります
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「ストレス性高血圧」と誤認されやすいため、家庭血圧測定が有効
高血圧が「無症状でも危険」と言われる理由
● 動脈硬化が静かに進行する
血管壁に強い圧がかかることで、内皮細胞が傷つき、動脈硬化が加速します。これにより以下のような重大疾患を招きます。
脳卒中 | 脳出血・脳梗塞のリスク増加 |
心筋梗塞 | 冠動脈の動脈硬化による心筋壊死 |
心不全 | 心臓の収縮・拡張機能低下による息切れ・浮腫 |
腎不全 | 糸球体の障害による慢性腎臓病(CKD)進行 |
● 最初の症状が「倒れる」「しゃべれない」「歩けない」ことも
高血圧性脳出血では、一瞬の前兆もなく突然発症するケースも少なくありません。
無症状=安全ではない、という点を理解することが大切です。
自分は大丈夫?血圧管理のポイント
✅ 家庭血圧の記録を継続的に
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朝起きて1時間以内(排尿後・朝食前・服薬前)と、就寝前に測定
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2回測定し、平均値を記録すると診察時の参考になります
✅ このような方は特に要注意
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・両親・兄弟に高血圧や脳卒中・心筋梗塞の既往がある方
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・BMIが25以上(肥満)、運動不足、ストレスが多い方
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・50歳を超えて上の血圧が135以上の方は要チェック
当院で行っている高血圧の評価・治療
たに内科・循環器・消化器クリニックでは、患者さん一人ひとりに合った「継続可能な治療」を重視しています。
▶ 検査
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心電図・心エコー:左室肥大や心機能評価
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血液検査:腎機能・尿酸・糖・脂質・ホルモン(必要に応じて)
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尿検査:蛋白尿、腎障害の早期発見
▶ 生活習慣へのアドバイス
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塩分制限(1日6g未満)・減量・禁煙・節酒
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高血圧ガイドラインに基づいた運動療法(速歩30分/日)
▶ 薬物治療
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ARB・ACE阻害薬・Ca拮抗薬・利尿薬などを個別に調整
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一剤で効果が不十分な場合は少量多剤併用を基本としています
まとめ:症状がない今こそ「対策のチャンス」
高血圧は、症状がないからこそ見逃されやすい生活習慣病です。
「ちょっと高めかな?」と思ったそのときが、未来の脳卒中や心不全を防ぐチャンスです。
動悸・頭痛・めまいなど、わずかな体のサインを見逃さず、日常的な血圧チェックと循環器内科での評価を受けてみましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 血圧が高いのは一時的かもしれないので様子見で大丈夫?
→ 一時的な上昇でも、家庭血圧で繰り返し高ければ「高血圧予備群」です。放置せず確認を。
Q. 高血圧の薬は一生飲み続けないといけませんか?
→ 生活習慣の改善次第で減薬・中止が可能な場合もあります。主治医と定期的に相談しましょう。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
参考文献・引用元一覧
[1] 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2024(JSH 2024)
[2] 日本循環器学会. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン
[3] MSDマニュアル家庭版. 高血圧の症状と合併症.
[4] UpToDate: Clinical manifestations and evaluation of primary hypertension in adults
[5] 日本腎臓学会. CKD診療ガイド2023
[6] 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021
[7] 日本内科学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022年改訂版)