足のむくみ(下腿浮腫)の原因と受診の目安
はじめに
「夕方になると足がパンパン」「靴下の跡がくっきり残る」「最近、足首が腫れてきた気がする」――こうした足のむくみ(下腿浮腫)は、多くの方が経験する症状です。
単なる疲れや塩分の摂りすぎで起こることもあれば、心臓・腎臓・肝臓などの病気のサインであることもあります。
この記事では、循環器内科専門医が足のむくみの原因・危険なサイン・受診の目安についてわかりやすく解説します。
1. 足のむくみ(下腿浮腫)とは?
下腿浮腫は、足の皮下組織に余分な水分がたまり、腫れたような状態を指します。
押すとへこみができて元に戻るタイプ(圧痕性浮腫)と、へこまないタイプ(非圧痕性浮腫)があります。
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圧痕性浮腫:心不全、腎不全、低たんぱく血症、静脈うっ滞などで見られます。
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非圧痕性浮腫:リンパ浮腫、甲状腺疾患、炎症などで見られます。
2. むくみの主な原因
足のむくみの原因は大きく分けて生理的なものと病的なものがあります。
(1)生理的な原因
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長時間の立ち仕事・デスクワーク
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塩分の摂りすぎ
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月経周期・妊娠
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運動不足による血流停滞
(2)病的な原因
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心臓の病気:心不全、弁膜症、心筋症など
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腎臓の病気:慢性腎不全、ネフローゼ症候群
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肝臓の病気:肝硬変などによる低アルブミン血症
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血管の病気:深部静脈血栓症(DVT)、下肢静脈瘤
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リンパ系の異常:リンパ浮腫(手術・がん治療後など)
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内分泌疾患:甲状腺機能低下症 など
3. 危険なサイン
次のような場合は、早めの受診が必要です。
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片足だけ急に腫れた(深部静脈血栓症の可能性)
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息切れ・動悸・体重増加を伴う(心不全の可能性)
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全身のむくみ+尿が少ない(腎障害の可能性)
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皮膚の色が変化している、痛みを伴う
4. 医療機関での検査
当院では、症状や経過を聞き取り、以下のような検査を組み合わせて原因を探ります。
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血液検査(腎機能、肝機能、心臓のマーカー、甲状腺ホルモンなど)
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尿検査(タンパク尿、血尿)
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心電図・心エコー
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下肢静脈エコー(血栓の有無を確認)
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胸部レントゲン(心拡大や肺うっ血)
5. 治療と予防
治療は原因に応じて行います。
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心不全:利尿薬、減塩、心機能改善の治療
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腎・肝疾患:原疾患治療、栄養管理
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静脈うっ滞:弾性ストッキング、下肢挙上、手術
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リンパ浮腫:リンパドレナージ、圧迫療法
日常でできる予防策としては、
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塩分を控える(1日6g未満推奨)
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足を心臓より高くして休む
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適度な運動でふくらはぎを動かす
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長時間同じ姿勢を避ける
6. 当院の特徴
当院では、循環器内科専門医による心臓・血管疾患の精密評価と、エコー検査を用いた診断が可能です。また、腎臓や肝臓疾患も総合的に診療し、必要に応じて専門医療機関と連携します。
足のむくみは放置せず、気になる場合はお気軽にご相談ください。
まとめ
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足のむくみは疲れや生活習慣だけでなく、重大な病気のサインになることもあります。
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片足のみ・急な腫れ・息切れを伴う場合は要注意です。当院では原因を的確に診断し、早期治療につなげます。
たに内科・循環器・消化器クリニック 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦
【引用文献】
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1.日本循環器学会編. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2021年度版).
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2.日本内科学会. 内科学 第12版. 東京: 医学書院, 2021.
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