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LDLコレステロールと中性脂肪、どう違う?数字の見方と危険度

はじめに

健康診断で「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されたことはありませんか?
どちらも脂質異常症の診断に関わる重要な数値ですが、その役割や危険性は異なります。

この記事では、LDLコレステロールと中性脂肪の違い・基準値・危険性・改善方法を解説します。


1. LDLコレステロールとは?

LDLコレステロール(Low-Density Lipoprotein Cholesterol)は、いわゆる「悪玉コレステロール」です。
コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となる重要な物質ですが、血液中に過剰に存在すると動脈硬化の原因になります。

LDLコレステロールの役割

  • ・肝臓から全身の細胞へコレステロールを運搬

  • ・細胞の修復やホルモン合成に必須

  • ・過剰になると血管の壁に沈着し、動脈硬化を進行させる

動脈硬化は静かに進行し、心筋梗塞や狭心症の原因となります。特にLDLが高い状態が長期間続くことが危険で、早めの管理が必要です。

基準値(日本動脈硬化学会)

  • 正常:140 mg/dL未満

  • 境界域高値:140〜159 mg/dL

  • 高LDLコレステロール血症:160 mg/dL以上


2. 中性脂肪(トリグリセリド)とは?

中性脂肪は食事や体内で作られた脂肪の一種で、エネルギーの貯蔵庫のような役割を果たします。
空腹時よりも食後に上昇しやすく、肥満や糖尿病と関係が深い数値です。

中性脂肪の役割

  • ・体のエネルギー源

  • ・内臓や皮下脂肪として蓄積し、体温維持や内臓保護

  • ・過剰になると急性膵炎や動脈硬化のリスク

中性脂肪が高いとHDL(善玉コレステロール)が下がり、血管の保護作用が弱まります。
また、LDLが酸化されやすくなり、動脈硬化をさらに悪化させます。

基準値

  • 正常:150 mg/dL未満

  • 境界域高値:150〜199 mg/dL

  • 高中性脂肪血症:200 mg/dL以上


3. LDLコレステロールと中性脂肪の違い

項目 LDLコレステロール 中性脂肪
主な役割 コレステロールを全身へ運ぶ エネルギーを蓄える
主な影響 動脈硬化を進める 高値で膵炎・HDL低下
上昇原因 遺伝、飽和脂肪酸過多、運動不足 糖質過多、飲酒、肥満
改善の鍵 飽和脂肪酸制限、薬物療法 糖質制限、減量、飲酒制限

4. 危険度と病気の関係

LDL高値の危険

  • ・冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)の主要リスク

  • ・脳梗塞、末梢動脈疾患

  • ・家族性高コレステロール血症では若年から発症

中性脂肪高値の危険

  • 500 mg/dL以上で急性膵炎リスク

  • ・HDL低下による動脈硬化リスク増加

  • ・メタボリックシンドロームとの関連

当院の特徴
当院では頸動脈エコーなどを用いて実際の動脈硬化の程度を確認できます。数値だけでなく「血管の現状」を把握した上で治療方針を提案します。必要に応じてより詳しい検査(冠動脈CTなど)の精査を提案いたします。


5. 検査値の見方

  • LDL-C:140 mg/dL以上で生活習慣改善、160 mg/dL以上で薬物療法検討(リスクによる)

  • TG:150 mg/dL以上で生活習慣改善、400〜500 mg/dL以上では薬物療法で膵炎予防

ポイント
同じ数値でも、糖尿病・高血圧・喫煙歴がある場合はリスクが高く、循環器医による総合評価が必要です。


6. 改善方法

LDLコレステロール対策

  • ・飽和脂肪酸を多く含む食品(バター・ラード・肉の脂身)を減らす

  • ・魚、大豆、ナッツを積極的に

  • ・有酸素運動を継続

  • ・必要に応じてスタチンやエゼチミブ等の薬物療法

中性脂肪対策

  • ・糖質制限(甘い飲料、菓子、白米・パンの食べ過ぎを控える)

  • ・アルコール制限(特にビール・日本酒)

  • ・減量(5〜10%の体重減で改善)

  • E・PA・DHAの摂取

当院では生活習慣改善の具体的アドバイスから薬物治療まで、患者さんのリスクに合わせて治療を行います。


7. LDL・中性脂肪が同時に高い場合

両方が高いとリスクは相乗的に上がります。
特に糖尿病や高血圧を合併している場合は動脈硬化の進行が早く、早期介入が必須です。


8. まとめ

  • ・LDLコレステロールは動脈硬化の直接的原因

  • ・中性脂肪は急性膵炎やHDL低下の要因

  • ・循環器内科専門医による総合評価でリスクを正確に把握できる

  • ・数値改善は将来の心筋梗塞・脳梗塞予防に直結

たに内科・循環器・消化器クリニック                                                                                                                                                                                                                                                                                 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦 


参考文献

  1. 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版.

  2. Grundy SM, et al. 2018 AHA/ACC Guideline on the Management of Blood Cholesterol. J Am Coll Cardiol. 2019;73(24):e285–e350.

  3. Miller M, et al. Triglycerides and cardiovascular disease: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2011;123(20):2292–2333.