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LDLコレステロールは食事だけで下がらない?本当に必要な対策とは

健康診断で「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い」と指摘されたことはありませんか?
多くの方が「まずは食事で下げよう」と考えます。しかし、LDLコレステロールは食事だけで十分に改善できない場合も多いことをご存じでしょうか?

この記事では、食事療法の効果と限界、薬物療法の必要性について、循環器内科専門医、総合内科専門医が解説します。


LDLコレステロールとは?

LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、血液中にコレステロールを運ぶ役割を担っています。
しかし、過剰になると血管の壁にたまり、動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気にもつながります。


食事療法の効果はどのくらい?

脂質異常症と診断された方にまず勧められるのが「食事療法」です。主に以下の点がポイントになります。

  • ・飽和脂肪酸(バター、肉の脂身、乳製品)を控える

  • ・トランス脂肪酸(マーガリン、加工菓子)を避ける

  • ・野菜や食物繊維をしっかり摂る

  • ・青魚やナッツ類で良質な脂質を補う

これらの食事改善により、LDLコレステロールは5〜10%程度下がることが期待できます

ただし、効果には限界があります。

食事での改善は“軽度の脂質異常”には有効ですが、

  • ・LDLが160mg/dL以上

  • ・家族性高コレステロール血症(FH)

  • ・糖尿病や高血圧などの合併疾患がある

このような場合は、食事療法だけでは十分な改善は困難です。


食事で下がらない理由:遺伝や代謝も関与

LDLコレステロール値は、食事だけでなく「体質(遺伝)」や「肝臓でのコレステロール合成能力」によっても大きく左右されます。

特に、家族性高コレステロール血症(FH)の方では、コレステロールの代謝に関わる遺伝子が変異しており、食事改善だけでは不十分です。

また、年齢やホルモン、肥満、運動不足なども複合的に関与するため、総合的な対応が必要となります。


薬物療法の役割とタイミング

LDLコレステロールが高値を示す場合、医師は以下のような薬物療法を検討します。

代表的な薬剤

薬剤名 働き
スタチン系 肝臓でのコレステロール合成を抑制
エゼチミブ 小腸でのコレステロール吸収を抑制
PCSK9阻害薬 LDL受容体の分解を抑え、血中LDLを低下(注射薬)

これらの薬を適切に使用すれば、LDLを30〜50%程度下げることが可能です。

副作用はあるの?

スタチンにおける筋肉痛や肝機能異常などが一部で報告されていますが、当院では定期的な血液検査で副作用をチェックしながら、安全に治療を進めています


当院でできること

当院では、以下のような流れで脂質異常症を評価・治療しています。

  1. ・詳しい血液検査(LDL、HDL、中性脂肪、non-HDLなど)

  2. ・動脈硬化の評価(頸動脈エコー、心電図)

  3. ・患者さんの背景(家族歴、糖尿病、生活習慣)に基づいた個別治療

  4. ・必要に応じて食事指導・運動アドバイスの実施

女性医師による診療も可能ですので、初めての方も安心してご相談ください。


まとめ:食事は大事、でも“それだけ”では足りないことも

LDLコレステロールを下げるには、食事療法はとても大切です。しかし、それだけでは限界があるケースも多く、適切なタイミングで医療機関を受診し、医師と相談しながら治療方針を決めることが重要です。

「薬はできれば使いたくない」という気持ちもよくわかりますが、放置による動脈硬化リスクの方がずっと高いという事実を、ぜひ知っておいていただきたいと思います。


💡受診のタイミングでお悩みの方へ

  • ・健診でLDLが140以上だった

  • ・家族に心筋梗塞・脳梗塞の既往がある

  • ・食事を見直しても改善しない

こうした方は、早めの受診をおすすめします。
当院では生活習慣病や脂質異常症の専門的な管理を行っております。お気軽にご相談ください。

※本記事は日本動脈硬化学会・厚生労働省の公開資料、ならびに最新の診療ガイドラインに基づいて作成しています。

                                                        たに内科・循環器・消化器クリニック                                                                                                                                                                                                                                                                                 循環器内科専門医・総合内科専門医 谷信彦   

参考文献・引用元一覧

  1. 日本動脈硬化学会
    「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
    https://www.j-athero.or.jp/

  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット

  3. 日本循環器学会/日本高血圧学会 ほか
    「生活習慣病予防のための食事ガイドライン」
    (厚労省・健康日本21 連携資料)
    https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/syokuji_guideline2020.pdf

  4. 日本脂質栄養学会
    「コレステロールと食事に関する正しい知識」
    https://www.lipid.or.jp/

  5. 家族性高コレステロール血症診療ガイドライン 2017年版
    (日本動脈硬化学会 編)
    https://www.j-athero.or.jp/guideline/

  6. UpToDate - LDL-lowering therapy
    UpToDate (医療従事者向け、有料)

  7. Clinical Practice Guidelines for the Management of Dyslipidemia 2023
    American College of Cardiology (ACC) / American Heart Association (AHA)
    https://www.acc.org/